新年一発目!ここはひとつ昨年なにかと話題だった・・ずばり『鰻』いっちゃいましょう!「え~、冬にウナギ?」と思われるかもしれませんが鰻の旬は夏の土用ではなく冬。と言っても、現在流通しているのはほぼ養殖(市場の99.5%)なので実は旬は一年中。今回はその辺の事情も含めご紹介しゃす。
五反田にある「よね山」は五反田駅からは少し離れていますが、『梅林』を越え200mほど進むと甘~い蒲焼きの薫りが漂ってくるのですぐに分かります。1階のカウンター6席+2階席と決して広いとは言えない店内はいつも満席、近所の人たちにとても愛されている鰻屋さんです。
『鰻重(上)』や~見事な艶。ふわっふわに蒸され表面をパリっと焼かれた、いわゆる関東式の蒲焼きです。ベトっとすることなくやや薄めに絡められたタレ。そのタレを程よく吸ったふかふかのご飯。この三位一体感、た、たまらん!
もういっちょ。た、たまらん!!
よね山の鰻は鹿児島産。注文を受けてから裂いて打ってじっくり焼く、という正当派ではなく、蒸し置きされた鰻をオーダー後に炙る庶民派スタイル。なので注文から出るまでめっぽう早いです。しかーし。凄まじく回転率の良いお店なのでこの価格帯ではありえないくらいウマい!上手!!口にするたびに大将の鰻への愛、お客への情をひしひしと感じます。
よね山がオープンした2008年当初はこの『鰻重(上)』が1400円という破格でした。『うな丼』にいたってはなんと950円!それが今では1400円→2300円、950円→1500円と市場の煽りを受けての値上げに。もっとも周囲から比べたらまだまだ充分に安価ですが。
そもそもこの鰻の値上げ問題。ニュースでも多く取り上げられていた2012年はそれこそ爆発的に価格が跳ね上がりました。それは何故か?その背景には昨今のウナギの大不漁、”白いダイヤ”とまで呼ばれるシラスウナギ(ウナギの稚魚)の問題があります。
ここから先はお店の紹介とは全く関係ないのでマニアの方のみご覧ください 笑
大不漁?いっても天然モノではなく養殖ウナギが主流なんでしょ?もっと育てれば?と言いたいところですが、ウナギは生物学的に謎が多く、孵化直後の稚魚の人工飼育がまだまだ難しいんだそうです。ゆえに完全養殖が困難なため、天然のシラスウナギを海で捕獲し、人工飼育する形で養殖を行っています。その結果、人工授精→孵化→飼育→成魚→人工授精、と一貫した生産管理を行える他の生物とは異なり、おいそれと漁獲高を増やすことができないどころか、毎年の供給が非常に不安定なんだそうです。
そんな不安定な供給のなかでもスーパーやコンビニ、ファーストフード店などでの大量需要は年々高まっており、過剰な消費が続いているのが現状です。ウナギの養殖形態は、言い換えれば鰻専門店のウナギもスーパーのウナギも、育つ環境、捌かれる環境が異なるだけで出所は一緒ということになります。大量需要が高まれば高まるほど、いままで鰻専門店にまわっていた稚魚ウナギも大量消費側のプラントにまわされ、相対的に枯渇し、価格が跳ね上がる、という仕組みなんだそうです。
ウナギの漁獲量は50年前に比べ、2012年では1/20以下まで減ってきています。現在、世界のウナギのうち、実に70%が日本で消費され、さらにその70%を上記の大量消費が占めているそうです。
そこで僕なんかは思うわけです。そんなポンポン薄利多売しないでさ、鰻専門店だけで扱う高貴な存在、従来の仕組みに戻して、完全養殖で流通に乗るようになってから大量消費側にも回せばいいじゃないか、それからでも遅くはないんじゃないか、と。たいしてウマくもない工業製品な鰻を喰って嬉しいんか!と。それに昨年はスーパーやコンビニの鰻も値上がりして、もはやそこまでお得な価格帯ではないし・・。お客の手が伸びない影で大量廃棄されているかと思うと、もうね・・。
現在、急ピッチで完全養殖の研究は進んでいるそうですが(完全養殖自体は田中秀樹さんが2010年に世界で初めて成功、その後は大規模飼育を研究中)、このままでは完全養殖の完成を待たずして世界中のウナギを食い付くし(現にいま、ウナギ最後の聖地アフリカにも手を伸ばし始めているそう)、絶滅の可能性すらリアルにあります。誰もが気軽に食べられるようになったことにより、皮肉にも将来、鰻屋さんが無くなってしまうかもしれない現実・・。蒲焼きの甘~い薫りを嗅いだときだけでも、日頃の”食生活の仕組み”について見つめ直してみるのもいいかもしれません。
な~んて新年早々、尊大に書いてしまいましたが 笑。今年も感謝の念をもって鰻屋さんでおいしい鰻重をいただきたいと思います!本年もよろしくです。
参考文献:
“national geographic:ウナギが食べられなくなる日|井田徹治”
“ウナギのなぞにせまれ|NHK for School”
“ウナギに関する研究情報|水産総合研究センターウナギ統合プロジェクトチーム”
よね山(五反田)
03-5422-9111
品川区東五反田3-19-4
AM11:00~PM14:30|PM17:00~PM21:00頃
日 定休
鰻重(上):2300円